お菓子や化粧品の紙パッケージなどを、触ってみると表面に凹凸がついているものがあります。立体感のあるデザインは、商品のロゴや社名を強く印象付けますよね。ひょっとすると、それは エンボス加工 または デボス加工 かも知れません。

エンボス加工 やデボス加工 は、名刺やメッセージカード、シールラベルなど、あらゆるところに使用されています。

ツジカワは箔押し版だけでなく、 エンボス 版やデボス 版の製造においても、国内トップメーカーとして長年その製造に携わってきました。

クマのイラストのエンボス加工
【エンボス加工】線幅0.3mm程度 紙:ディープマット#360 加工:腐食版+ナイロン版
くまのイラストのデボス加工
【デボス加工】線幅0.3mm程度 紙:ディープマット#360 加工:腐食版+ナイロン版

エンボス加工 とは

エンボス加工とは用紙を版の形に浮き出す加工です。

浮き出し加工とも呼ばれます。

金属版と樹脂版を使用して、紙を挟み込むことで絵柄を浮きあげます。

 

逆向き(文字が読めない向き)の金属製凹版を上にとりつけ、正向き(文字が読める向き)の凸版(樹脂版)を下に取り付けます。

エンボス加工の工程の様子は動画でもご紹介しておりますので、ぜひ御覧ください。

エンボス加工の仕組みの図解とエンボス加工例 embossed paper

デボス加工 とは

デボス加工は用紙を版の形に凹ませる加工です。

型押し」とも呼ばれます。

金属版と樹脂版を使用して用紙を挟み込んで版の形に押し込みます

 

逆向きの凸版(金属版)を上にとりつけ、正向きの凹版(樹脂版)を下に取り付けます。

下に取り付ける樹脂の凹版は、使用されないこともあります。

受け版を使用せずに絵柄を押し込む場合は「空押し(からおし)」と呼ばれます。

デボス加工図解とデボス加工例の写真 debossed paper

 

腐食版・彫刻版 の違い

エンボス加工 ・デボス加工 には腐食版または彫刻版が使用されます。

腐食版によるエンボス加工 ・デボス加工

金属腐食版とナイロン版と呼ばれる樹脂版の組み合わせを使用して加工します。

 
最も一般的なエンボス(浮き出し)、デボス(型押し)加工であると言えます。

 
同一高さの凹凸が作成可能で、コストが低く短納期に対応可能です。写真の金属版はマグネシウム版ですが、銅版での作製も可能です。

腐食版の材質・サイズについてはこちらからご確認ください。

腐食版のエンボスデボス加工の版写真と仕上がり写真
腐食版のエンボス・デボスは基本的に1段階の浮き上げ・押し込みとなる

 

彫刻版によるエンボス加工 ・デボス加工

彫刻版は機械で彫られた版です。

彫刻版の詳細についてはこちらの記事も御覧ください

腐食版と比較すると下記のような違いがあります。

 

  • 凹凸表現の指定が可能】三角彫り、平丸彫り、台形彫りなど様々な表現が可能です。
  • 3Dモデルデータの確認が可能】 版を作成する前に画像にてデータ確認を行うことが可能です。
  • スケッチからのデータ作成が可能】写真やイラストからデータの作成が可能です。参考写真や断面形状のスケッチなどを共有いただくことで、よりイメージに近い形状を作成できます。
  • 異素材感の表現が可能】 紙に革・布地・刺繍のようなテクスチャーを付与できます。


彫刻版によるエンボス加工

 彫刻版を使用した版の組み合わせは2種類あります。

  • 金属版+ニュークリアダイ(型取成型雄版)
  • 金属版+金属版

金属版+ニュークリアダイ(型取成型雄版)

ニュークリアダイはナイロン版とは違い、腐食で製作するのではなく、元型に樹脂を流し込んで成形するタイプの樹脂版です。

元型代の費用がかかりますが、有機的な立体感や精細な絵柄の表現が可能です。

 

彫刻エンボス版と加工例
トンボの羽や目の細かい点まで表現することができている。

金属版+金属版

金属凸版と金属凹版の組み合わせも可能です。

金属版とニュークリアダイの組み合わせと同じく複雑な凹凸表現、3Dモデルデータの確認、質感の付与などが可能です。彫刻深度を自在に変えられるため、ニュークリアダイよりもより高低差があるエンボス加工が可能です。しかし、ニュークリアダイに比べると金属版はクッション性が低いため、紙によっては破れが生じることがあります。

ある程度の厚みがあり、伸びやすい紙へのエンボス加工・デボス加工に最適です。

彫刻エンボス 3Dモデリングデータ 凸版 加工例
さわるコレクション2020-21年度版「竹内栖鳳《春雪》昭和17(1942)年」 紙:パチカ

こちらの作品は京都国立近代美術館様「さわるコレクション」プロジェクトの一環として有限会社コスモテック様にて加工されたものです。ツジカワは3Dデータの作成・版製作にて関わらせていただきました。
製作の詳細に関してはコスモテック様の下記noteを御覧ください。
「京都国立近代美術館 – 竹内栖鳳 『 春雪 』 彫刻エンボス加工 【前半】」

「京都国立近代美術館 – 竹内栖鳳 『 春雪 』 彫刻エンボス加工 【後半】

ツジカワの考えるエンボス加工 ・ デボス加工のメリット・デメリット

冒頭に述べたように、エンボス加工・デボス加工はお菓子やお酒、化粧品の紙パッケージ、貼箱、名刺、メッセージカード、本の装丁など、至るところに使用されています。

ツジカワはエンボス加工・デボス加工のメリット・デメリットは下記のような点にあると考えています。

    

エンボス加工 ・デボス加工のメリット

  • 立体感を演出することができる
    • エンボス・デボス加工の最大の魅力と言えるでしょう。通常の印刷では出せない立体感は、ひときわ目を引く存在感を放ちます。ワンポイントであっても、会社のロゴやイラストをエンボス・デボス加工で表現することで、デザインを際立たせることができます。
  • 高級感や特別感を強調できる
    • 一目で「手がかかっている」ことがわかる加工であるエンボス・デボス加工は製品や印刷物に格調高さを与えます。高級酒やチョコレートなど嗜好品のパッケージにエンボス・デボス・箔押しが多く用いられる理由のひとつです。
  • 革や布のような異素材の質感を紙に与えられる
    • ワニ革のボツボツ、ジーンズのザラザラなど、思わず触りたくなる質感を演出することができます。印刷と組み合わせることによってさらにリアルな視覚効果を生むことができます。
  • 点字を表現できる
    • 視覚障害者のための点字や、触図にエンボス加工が使用されています。ツジカワは効果的な点字エンボスの加工法にも力を入れています。こちらについては今後ご紹介していきたいです!
  • 環境負荷が少ない
    • エンボス・デボス加工は紙のリサイクルに影響を与えないため、環境負荷が少ない加工であると言えます。

エンボス加工 ・ デボス加工のデメリット

  • 単体では)視認性・可読性に欠ける
    • 印刷なしで、エンボス・デボス加工だけを施す場合、紙の種類・光の当たり具合などによっては情報が読み取りにくくなります。
  • 細い文字や小さな絵柄は反映できない
    • 紙の薄さや材質によりますが、印刷に比べるとどうしても細かい文字や絵柄は反映し辛いです。どれぐらいの線幅であればエンボス・デボス加工で再現が可能なのかについては今後検証記事を書いていきます!
  • コストがかかる
    • 型代・加工代がかかります。加工費等はご依頼の印刷所様にお問い合わせください。

版の詳細スペックは技術紹介ページでご確認ください。
版をご依頼の際は絵柄データだけではなく、紙厚・紙の種類を教えていただけると、より最適な仕様で版を製作することができます。

エンボス・デボス加工は紙との相性、型のクリアランス、機械のセッティング等々いろいろな要素が絡み合うので、今後どんどんマニアックに彫り下げて行きたいと思います!

最後までお読みいただきありがとうございました!