皆さん「 パッケージデザイン 」と聞くとどんなことを思い浮かべますか?

「パッケージ」に関しては色々と思い浮かべるものはあるかも知れませんが「パッケージデザイン」となると面白そうな反面、「なんとなく難しそう」とか 「とっつきにくい」みたいなイメージもあるんじゃないでしょうか。

しかし私達が日々スーパーマーケットやコンビニで見るお菓子や化粧品、 私がいまムグムグ食べているチョコレートのパッケージだって全ては誰かがデザインしているんですよね。

そう考えると パッケージデザイン は、私達の生活にかなり近しいデザイン分野だと言えるでしょう。

箔押し 加工がされたパッケージ

ツジカワが展示会用に作成した紙器パッケージ

パッケージデザインを勉強している学生さんの中には、明確に「パッケージデザイナーになる!」と決めている方もいれば、 デザイン領域を仕事にする上での選択肢の一つとして考えてる方もおられると思います。

今回ご紹介する日本パッケージデザイン学生賞はそんな「パッケージデザイン」に興味がある学生の背中をヒョイと押して、 「なんとなく難しそう」なハードルをぴょんと飛び越えてもらうような取り組みです。

日本 パッケージデザイン 学生賞とは

日本パッケージデザイン学生賞は、 日本在住で応募時に大学・専門学校に在学中の学生でプロとして活動していない方なら誰でも応募できるパッケージデザインコンペティションです(高校生は除く)。

ワークショップ、コンペティション、交流会などパッケージを取り巻く様々な形の「場づくり」に力を入れているJPDA(公益社団法人日本パッケージデザイン協会)が主催しており、2022年に第1回が開催され、本年(2023)で2回目の開催となりました。

審査員は第一線で活躍しているプロのパッケージデザイナーや有名企業のアートディレクターの方々など。

プロに作品を審査してもらえる、というだけでも貴重な機会ですが、 入賞した暁にはJPDA、スポンサー企業からの様々な特典が用意されています。
※特典の内容は年によって変わります。

ツジカワは、縁あって今回初めて本学生賞のスポンサーとなることとなりました。

ツジカワの パッケージデザイン にかける思い

「箔押し」「エンボス」「罫線押し」「ダイカット」など パッケージの製作技術に関わる「型」を提供する会社であるツジカワですが、「パッケージデザイン」という川上の仕事に関しても、もっと深く関わっていきたいし、 できることがもっとたくさんあるはず、と考えていました。

そんなツジカワが本学生賞のスポンサーになると決めた際に弊社社長の辻川はこのように語っていました。

近年デジタル化や脱プラなどで、パッケージやラベルをできるだけ省略したり、簡易化したり、という動きが進んでいる。
それ自体は決して悪いことではなく、近年の環境問題や社会情勢を考えれば当然の潮流である。
しかし、一方で、「実際に見て、触ることのできる物質としてのパッケージ」も我々は大事していきたい。
そこには人に喜びや感動を与える力があると信じているから。

ツジカワは他の名だたるスポンサー企業さんのように大きな会社ではないが、パッケージに対しての思い入れは深い。
やるからには彼らと肩を並べるぐらい、この学生賞を積極的にサポートしていきたい。
このコンペに参加する学生さんたちが将来我々を「おお!」と言わせてくれるような面白いものを作って、パッケージ業界がもっと盛り上がってくれることが、回り回って私達の業界を支えてくれることにもなる。

 

この賞をきっかけとして、将来パッケージデザイナーになる方やパッケージに携わる方が増えてくれれば我々としても嬉しい限りです。

審査会に至るまで

スポンサーに決定してからは、学生コンペ委員会の一員としても、11月の贈賞式に至るまでの打ち合わせやワークショップに参加させてもらいました。

※ツジカワがワークショップに参加した面白おかしいレポートはこちら!

月1回の定例web会議では、学生コンペ委員会の十数名が集まって2時間ほどwebミーティングをして学生賞に関わるあらゆることを決めていきます。

皆さんそれぞれ本業の業務の合間を縫って会議に参加し、作品の提示の仕方や、表記で審査に不平等が生じないように、 バイアスがかからないように、非常に細かい点まで気配りされているのが印象的でした。

ツジカワ謹製 銅製審査プレート

ツジカワの製品でご協力できるものがあれば・・・ ということで審査会の際、審査員の票となる銅製のプレートを作成しました。

誰が投票したか名前がわかってしまうと審査員の中でバイアスがかかってしまう、という理由から審査員1人1人にアルファベットを割り当てて投票する方式が採用されました。
こちらのプレートは来年以降の審査会でも使用していただけるそうです!

切り離された銅版プレート
仕上げ前のプレート
銅版のバリを取る
バリ取り
研磨
銅版プレートの仕上げ作業
脱脂
完成!かっこいい!

賞状入れへの箔押し加工

また、プレートだけではなく受賞者に渡される賞状入れへの箔押しも手伝わせていただきました!
青地に青の箔押しがきらりと光ります。

箔押しされた賞状入れ

副賞品

受賞者全員に配る副賞品にはツジカワの彫刻版で加工したエンボスサンプル彩光腐食やマジックエンボス、チェンジングを配した押し見本をつけました。

トンボの彫刻エンボス

日本 パッケージデザイン 学生賞審査会当日

JPDA理事長小川さんのご挨拶で審査会スタート

男性が前に立ち、まわりに人がいる。男性の後ろのスクリーンにスポンサー名が表示されている。

審査員の方々の邪魔にならないタイミングで我々も並んだ作品を拝見しました。

テーブルに並べられた紙を見る男性

会場に並べられたA3の紙には作品のタイトル、画像、コンセプトのみが記載されています。

パッケージデザインの賞なのに現物で審査しないのは意外に思われるかも知れませんが、
アクセスできる設備や資金で応募者間に大きな差が生まれないように、
モックアップの撮影画像または3D画像での作品提出となっています。

様々な作品を見ながら個人的に思ったのは「皆さんアンテナが広いな」ということ。 パッケージデザイン案なので、基本的には製品をより美しく見せたり、使いやすくしたり、というものなのですが、コンセプトを読んでいると「どこに問題意識を持っているのか」ということが見えてきます。

その「どこに」という点がそれぞれ違ってとても面白い。
なぜこんなマニアックな製品のパッケージを!?とか
よく見る製品だけど、この点については考えたことなかった! など気付かされることが多く、日々私が気にも留めてないことに気がつく学生さんたちの着眼点にひたすら感服しておりました。

作品を取り囲む審査員

和やかながらも緊張感のある雰囲気で審査が進み、徐々に上位に残る作品が絞られていきます。

2次審査を1位で通過した作品が最終審査では上位に入らなかったり、
当初得票数が少なかった作品が、票を入れた審査員による応援プレゼンで多数の票を獲得して上位に食い込んだりなど、
現場で審査することのダイナミズムを感じます。

作品の前にプレートを置いていく審査員

後ほど贈賞式で審査員の方々が語られていたことですが

「モニター越しで作品を見ていた2次審査の時よりも、出力された紙で見るほうがより情報が入ってきて、気が付かなかった点や魅力に気づくことができた」

「1人で審査していたときよりも、審査会で他の人の意見を聞くことで色々な視点が見えた」というように、

リアルな場で作品を見ること、そしてそこで様々な意見や視点が交錯することが、
作品へのより深い理解につながっているようでした。

得票数が同じ作品が出てくるなど、上位になれば上位になるほど判断が難しくなります。

今回の学生賞のテーマである「ひらく」に沿っているのか?
「パッケージデザイン」ではなくて「プロダクトデザイン」になっていないか?
類似の商品があるのではないか?

議論に議論を重ねてすべての受賞作品が決まりました。

拍手をする審査員たち

ツジカワ賞の選出

さて、我々もツジカワ賞を選出しなければいけません。
企業賞なので、我々の独断と偏見で選んで良いとはいえ・・・悩みます。

作品を見ながら考え込む男性

今回ツジカワは大賞と企業賞の副賞として「作品の具現化」を掲げました。
そのためできれば「ツジカワの技術が映える作品を選びたい」というのは念頭にあったのですが、ツジカワが関わってる業界は意外に多岐にわたります。
印刷会社のとの連携も可能ですし、箔押し・エンボス等の加飾技術を提供できる場もあります。抜きや罫線の加工に使用される刃型も作成している上に、3Dプリンターもある、ということで逆に判断が難しいところがありました。

何度も作品間を行ったり来たりして審査会にお邪魔していたツジカワ関係者全員が納得できる作品を選びました。

ツジカワが企業賞として選んだのがこちらの作品です!

専門学校日本デザイナー学院 伊東 未夢さん作
作品名:「扇子(せんこ)ちゃん」

扇子のパッケージ 窓アキから扇子の絵柄が見える
扇子ちゃん別パターン
扇子ちゃんの中身 扇子を開いた状態で保管できるようになっている。

受賞理由

  • 扇子のパッケージというチョイス自体が「ひらく」というテーマにストレートに訴えかけている。
  • お店で扇子を選ぶときは開かないといけないので、製品を傷める可能性があるが、このパッケージであれば開かずとも商品を選ぶことができ、海外からの旅行者にも喜ばれそう。
  • お店で扇子を選ぶときは開かないといけないので、製品を傷める可能性があるが、このパッケージであれば開かずとも商品を選ぶことができ、海外からの旅行者にも喜ばれそう。
  • 商品がシリーズとして店頭に並んでいる様子が想像できる。
  • 箔押し・抜き加工といったツジカワの製品が関わる加工を施すことができる。

こうして企業賞を選出するという大役を果たす事ができて我々も一安心しました。
さて、この時点でまだ我々は、この作品を作った伊東さんのお名前も所属も知りません。
次回記事で贈賞式の模様と、その前日に開催された企業研修の様子について取り上げます!

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