銅版とマグネシウム版の特徴箔押し版 について ―箔版: 腐食版編-
前回の記事で「箔押し」についてザックリと説明しました。
今回紹介するのはそんな箔押し印刷(ホットスタンプ)に欠かせない「箔版」についてです。
弊社はこの箔押し用の金型(箔版)の作成に長年携わっている会社です。
さて、箔版にはどんな種類があるのでしょうか?
箔版の種類は?
作成の方法で箔版を分けると以下2種となります。
まず1の「腐食版」についてですが、薬品で金属を「腐食」して作成された版です。
そして2の彫刻版もその名の通り金属を「彫刻」して作成された版です。
この2つは版の作成方法も違えば、得意とする表現方法も違います。
長くなるので彫刻版の話は別記事でするとして、今回は腐食版に絞ってお伝えします。
腐食版の種類は?
日本国内の箔押し印刷に最も一般的に使用されている版が腐食版です。
ツジカワで取り扱っている腐食版には
- 銅版
- マグネシウム版
の2種類があります。
それぞれどんな違いがあるのでしょう。
1. 銅版について
まず、銅版の見た目は写真のとおり。
版を上から押して印刷するので逆版(文字が読めない向き)で作成します。
厚みは 1.0mm, 1.5mm, 3.0mm, 7.0mm と4種類あり、
1.5mm, 3.0mm, 7.0mmに関しては深彫り(通常よりも深く腐食すること)
が可能です。
銅版の特徴としては以下の通り
- 耐久性が良い
- 箔切れが良い
- (マグネシウム版と比べると)価格が高い
1.耐久性が良い
もう一方の材質マグネシウムと比較すると、圧倒的に硬度があるため耐久性が良いです。大ロットであったり、箔がへたりやすい条件のときは銅版による版の作成をお勧めします。
2. 箔切れが良い
「箔切れ」とは何ぞや、という話ですが、要は絵柄がシャープに出やすい、ということです。銅版はマグネ版よりも土手が鋭角なので箔詰まり(絵柄の細かい隙間が箔で埋まってしまう現象)が少ないとされています。
3. (マグネシウム版と比べると)価格が高い
銅版は原材料が高いのに加え、腐食に時間がかかるため、溶液も多く使用します。結果マグネシウムに比べると価格は上がります。
2. マグネシウム版について
対してマグネシウム版の見た目はこのようなものです。
厚みは1.0mm, 1.6mm, 3.0mm, 7.0mmと4種類あり、
3.0mm, 7.0mmに関しては深彫りが可能です。
マグネシウム版の特徴は以下の通り
- 耐久性は銅版に劣る
- 絵柄の再現度が高い
- 安価である
1. 耐久性は銅版に劣る
銅版にくらべると柔らかい材質なので、耐久性は落ちます。
また、酸化しやすいので大ロットには不向きです。
2. 絵柄の再現度が高い
腐食時間が短いため、細かい凸が残りやすく絵柄の再現度は銅版よりも良いとされています。細かい絵柄かつ小ロットの場合はマグネシウム版が向いています。
3.安価である
だいたい銅版の4割引きぐらいの値段です。
価格は面積や加工内容によって変動します。
価格に関しては弊社営業にお問い合わせいただくか、HP内のお問い合わせフォームからお問い合わせください。
3.断面の比較
銅版とマグネ版の断面図を比較してみましょう。
並べてみると銅版のほうが土手が鋭角に立っていおり、細い隙間も底まで腐食されているのが分かると思います。
マグネ版の写真のように土手が寝ているとこの三角のところに箔が詰まって絵柄が再現できなくなってしまうことがあります。
これを箔詰まりと呼んでいます。
また、押す紙が分厚く柔らかかったり、革製品に箔押しする場合などでもこのスペースに基材が入り込んでしまい箔詰まりが起きます。
4.箔押しの比較
では、実際に箔押しした場合の違いはどうでしょうか?
この写真からは明確な差は読み取れません。
このように、線幅3㎜程度の柄だとあまり差がつかないのが正直なところです。
版の写真だとマグネシウム版のほうが字が太って見えますが、土手が反射しているだけで押してみるとほとんど差がないことが分かります。
実際の箔押しに関しては、
- 線が細い(柄が細かい)
- ベタの中に細い抜き(箔押ししない部分)が入っている
など、厳しい条件のほうが銅版とマグネ版の違いがクリアに現れます。
このような、銅版とマグネシウム版を箔押しした際に出る違いについては、
今後別記事で紹介したいと思います。
5.版の耐久性、絵柄の再現度について
以上腐食版2種の紹介をいたしました。
ここまで読んで、実際にデザインされる方や、加工される方の中には、
「大ロットとはどれぐらいの量を指すのか?」や、
「細かい絵柄とは何mm程度の線を指すのか?」などの疑問を持たれる方がおられるかと思います。
残念ながらこの質問に明確にお応えすることは難しいです。
なぜなら使用される機械や箔の種類、紙の性質、加工者の技術力などの要素によって版の持ちも絵柄の再現性も大きく変わるからです。
絵柄でいうと、0.2mm程度の線であれば版では凸として残りますが、箔押しされたときにその線が再現できているかどうかは上記のような条件に依存します
「結構デザイン細かいけど箔押しで再現できるかな?」という場合は加工業者様にご確認いただくか、事前テストを行うことをお勧めいたします。
以上腐食版についてのお話でした。