「打ち抜き加工の刃型って、結局どれを選べばいいの?」
現場でそう感じたことはないでしょうか。

刃型(抜き型)には、ダイカットロール・フレキシブルダイ・彫刻刃型・トムソン型(木型)・ゼンマイ刃・プレス金型といった複数の種類があり、それぞれ得意な材料・ロット帯・精度レベルが異なります。にもかかわらず、種類ごとの違いを体系的にまとめた情報はほとんど見当たりません。

この記事では、創業100年超の刃型メーカーであるツジカワ株式会社が、刃型の基礎知識から各種類の特徴・選び方までを、実務目線で網羅的に解説します。

打ち抜き加工の刃型(抜き型)とは|基本の仕組みを押さえる

刃型(抜き型)とは、紙・フィルム・不織布・樹脂などの材料を任意の形状に打ち抜くための、加工用金型の総称です。

身の回りにあるシール、ラベル、紙パック、フェイスマスク、医療用パッチなど、「決まった形に切り出された製品」の多くは、刃型を使った打ち抜き加工によって生み出されています。

刃型の2つの加工方式|平圧式と回転式

刃型は、加工の動かし方によって大きく2つの方式に分類されます。

平圧式(平抜き)
上下のプレートで材料を挟み込み、刃を押し付けて打ち抜く方式です。加工精度が出しやすく、厚みのある材料や高硬度の材料にも対応しやすいのが特長です。

回転式(輪転)
ロール状の刃を回転させながら、材料を連続的に送り出して抜き加工を行う方式です。高速・大量生産に適しており、シール・ラベル・フィルムなどの加工ラインで広く採用されています。

どちらの方式が適しているかは、材料の種類・加工精度・生産数量・ラインスピードによって変わります。次のセクションから、各方式で用いられる刃型を種類ごとに詳しく解説します。

刃型の種類一覧|5種類+αの特徴を解説

刃型は、構造や製法の違いによっていくつかの種類に分けられます。ここでは実務で使われる代表的な5種類に加え、その他の刃型・加工技術を取り上げ、それぞれの特徴を解説します。

ダイカットロール|高速・大量生産の主役

ツジカワが製作したダイカットロール

ダイカットロールは、紙・不織布・フィルムなどの資材を任意の形状に切るための、ロール状の刃型です。回転式で資材をカットしていくため、平圧式(アップダウン)より高速・大量生産に向いています。資材をロールtoロールで送りながらカットするため加工スピードが圧倒的に速く、大量生産ラインにおける中核的な存在となります。

主な用途
ダイカットロールは「同じ形状を大量に、安定した品質で抜き続ける」ことが求められる製品です。
安定した品質で、高速連続加工が求められる分野で幅広く採用されています。
代表的な用途は以下のとおりです。

【日用品・衛材分野】 不織布マスク、ナプキン、オムツ、ウェットティッシュ
【医薬・化粧品分野】 フェイスマスク(シートマスク)、貼り薬
【包装・食品分野】 パウチ包装、軟包材、紙パック(液体カートン)、コーヒーフィルター、インモールドラベル、菓子
【資材・工業分野】 シールラベル、フィルム部材、バッテリー関係

ダイカットロールの強み
ダイカットロールが選ばれる理由は、【スピードと安定性の両立】にあります。
 
回転式のため、平抜き方式と比べて加工速度が格段に速く、連続生産に適しています。
大量生産においてはコストメリットも大きく、数万〜数百万単位のロット生産を前提とする製品では、最も合理的な選択肢となります。

ツジカワのダイカットロール
ツジカワでは、機械加工に加え、職人による刃先の手仕上げ加工も行っています。
機械加工の特性上、加工に限界のある細部などを熟練の職人が手作業で仕上げることで、機械加工の再現性に加えてプラスアルファの加工品質を実現しています。

カットする資材や使用環境に応じた表面処理・仕様調整にも対応しており、「使い始めてからの安定性」まで見据えたものづくりが特長です。再研磨が可能なため、ランニングコストを含めたトータルコストの最適化が図れます。また、ロールを組み込むユニット装置の新規設計製造や、既存ユニットの確認にも対応しています。

ダイカットロール製品ページ

彫刻刃型(平抜用)|高硬度・厚物材料を高精度に打ち抜く

彫刻刃型は、金属ブロックを切削・彫刻加工して刃を形成する、平抜き用の刃型です。金属を削り出して刃を作るため剛性が高く、硬い材料や厚みのある材料を高い精度で打ち抜くことに適しています。

また、刃と台座が一体構造であるため刃のつなぎ目がなく、トムソン型では出しにくい連続形状の精度を実現できます。

彫刻刃型が選ばれるケース
彫刻刃型は、他の刃型では対応が難しい条件下で真価を発揮します。

  • 高硬度の材料を抜く必要がある場合
  • 厚みのある材料に対して安定した加工精度が求められる場合
  • 大ロットで高い耐久性が必要な場合
  • フレキシブルダイやトムソン型では刃の剛性・耐久性が不足する場合

次のような中間的なロット帯でも活用されています。

  • ダイカットロール導入前の試作段階として、平抜きで加工条件を検証する
  • ダイカットロールほどの量産規模ではないが、フレキシブルダイやトムソン型では精度・耐久が足りない

特徴的な技術:3D彫刻刃型

▼【画像挿入】内容:3D彫刻刃型の刃先(高低差がわかるアングル)/alt:「刃に高低差をつけたツジカワの3D彫刻刃型」

ツジカワの彫刻刃型には、刃になだらかな高低差をつける3D彫刻刃型という独自技術があります。通常の刃型では刃の高さは一定ですが、材料の性質や形状に応じて刃の高さを微妙に変化させることで、立体形状の材料や複雑な加工条件にも対応可能になります。加工条件に応じた刃形状の設計は、長年の彫刻技術の蓄積があるからこそ実現できる領域です。

彫刻刃型(平抜用)製品ページ

フレキシブルダイ(腐食刃)|薄型・軽量で汎用性が高い

薄型・軽量が特長のフレキシブルダイ(腐食刃)

フレキシブルダイは、薄い金属板をエッチング(腐食)加工して刃形状を作り出す刃型です。「腐食刃」とも呼ばれます。薄型・軽量であることが最大の特長で、輪転抜き用・平抜き用のどちらにも対応できる汎用性の高さが支持されています。

「ピナクル型」との関係
検索上でよく見かける「フレキシブルピナクルダイ®」は、株式会社塚谷刃物製作所の登録商標です。
一般的な総称としては「フレキシブルダイ」または「腐食刃」が使われます。

主な用途
フィルム加工、シール・ラベルや封筒の打ち抜き加工で広く使用されています。マグネットシリンダーに巻き付けて使うケースもあり、「薄物かつダイカットロールほどのロット規模ではないが、連続加工が必要」という中間的なニーズに適しています。

技術的特徴
フレキシブルダイが高い加工品質を実現できる背景には、製造工程上の工夫があります。

  • マシニング加工の併用:エッチングで刃の形状を作った後にマシニング加工(機械切削)を施すことで、板厚のバラつきを最小限に抑える
  • 刃先形状の高精度化:微細な形状の抜き加工にも対応
  • 刃のつなぎ目がない:トムソン型のような「刃の合わせ目」が発生しないため、加工ムラが出にくい
  • 軽量性:取り扱いが容易で、版の交換時間を短縮できる
  • 台座のベースと組み合させて、カス処理機構などの機能付与も可能
フレキシブルダイ(腐食刃)製品ページ

トムソン型(木型・ビク型)|低コスト・短納期の定番

トムソン刃のイメージ画像

トムソン型(木型・ビク型)は、合板などのベース板に鋼製の刃を埋め込んだ構造の刃型です。金属を削り出す彫刻刃型やダイカットロールと比べて型のコストが低く、製作日数も短いのが最大のメリットです。そのため、試作から小〜中ロットの量産まで、非常に幅広い場面で使用されています。

豆知識|「トムソン型」と「ビク型」の呼び方の違い
同じ刃型でも、西日本では「トムソン型」、東日本では「ビク型」と呼ばれることが多くなっています。「トムソン」は米国トムソン社、「ビク」は米国ビクトリア社のプレス機に由来するとされています。現場によって呼称が異なるため、発注時には仕様や構造で確認するのが確実です。

トムソン型が選ばれるケース
トムソン型は、紙器・パッケージ・段ボールなどの加工を中心に、もっとも普及している刃型といえます。とくに次のような条件では、トムソン型が第一候補になります。

  • 型コストをできるだけ抑えたい
  • 短納期で型を用意したい
  • 試作や初期ロットで形状を検証したい
  • 小〜中ロットの生産で十分

一方で、刃のつなぎ目があるため、微細な形状の加工では精度が出にくい面もあります。

ツジカワとトムソン型の関わり
ツジカワでは、トムソン型そのものの製作は行っていません。

ただし、エンボス版やフレキシブルダイを組み込んだトムソン型については、協力企業と連携しながら製作に携わっています。打ち抜き加工とエンボス加工の一体化など、複合型のニーズがある場合はご相談ください。

プレス金型(パンチ金型)|工業用途の高精度抜き

プレス金型(パンチ金型)は、パンチ(打ち抜く側)とダイ(材料を支える側)を組み合わせた構造の、金属製刃型です。打ち抜かれた材料はダイ側に落ちる構造になっており、金属・樹脂をはじめとする工業用材料の加工において、高い精度と耐久性を発揮します。

自動車部品、電子部品、精密機器の部材など、寸法精度と量産安定性が厳しく要求される分野で広く使われています。

ツジカワとプレス金型(パンチ金型)の関わり
ツジカワでは、プレス金型そのものの製作は行っていません。フレキシブルダイを組み込んだプレス金型については、協力企業と連携しながら製作に携わっています。要求精度による刃型の使い分けやカス処理などの機能付与、複合型のニーズがある場合はご相談ください。

その他の刃型・加工技術

ゼンマイ刃|シール・ラベル加工を支える刃型

ゼンマイ刃は、帯状の薄い鋼刃を曲げ加工し、樹脂製のベース板に埋め込んだ構造の刃型です。主にシールやラベルの打ち抜き加工で使用されており、トムソン型と同様にコスト面での優位性があります

構造がシンプルで製作もしやすいため、小〜中ロットのシール・ラベル加工で広く採用されています。メーカーごとにベース樹脂板の色や構造・仕様が異なるため、使用する加工機や用途に合わせてメーカーを選定する必要があります。

カッティングプロッター・レーザーカッティング
刃型と比較されることが多いのが、カッティングプロッターとレーザーカッティングです。これらは「型」を使わずにデータから直接材料を切断できるため、次のような場面で強みを発揮します。

  • 1枚〜数十枚のオンデマンド加工
  • デザイン変更を即時反映したい場合
  • 試作・サンプル段階でスピードを重視する場合

一方で、加工スピードは刃型に比べて遅く、材料によっては対応できないケースもあります。量産フェーズではコスト面で不利になるため、少量・多品種のときはプロッターやレーザー、量産に入ったら刃型に切り替えるという使い分けが一般的です。

比較表|コスト・精度・耐久性で見る刃型の使い分け

ここまで紹介した刃型を、主な比較軸で一覧にまとめます。

刃型・金型の種類と特徴比較|ツジカワ株式会社
刃型・金型の種類と特徴比較
ダイカット
ロール
フレキシブル
ダイ
彫刻刃型 トムソン型 プレス金型
加工方式 回転式 回転式 / 平圧式 平圧式 平圧式 平圧式
初期コスト 高い 低い〜中 中〜高い 低い 中〜高い
寸法精度 高い 高い 高い 高い
耐久性 高い 再研磨可 高い 再研磨可 刃交換要 高い
素材の厚み 薄〜厚 薄〜中 薄〜厚 薄〜厚 薄〜厚
ロット規模 大量生産向き 小〜大量 中〜大量 小〜中量 中〜大量
※ ダイカットロール・フレキシブルダイ・彫刻刃型はツジカワ株式会社が自社製造いたします。トムソン型・プレス金型はご要望に応じて協力企業と連携してご提供します。
※ 内容はあくまで目安です。メーカーごとの仕様によって変わります。

選定の目安

  • 大量生産 × 紙/不織布/フィルム → ダイカットロール
  • シール/ラベル × 輪転加工 → フレキシブルダイ
  • 厚物/高硬度材 × 高精度 → 彫刻刃型
  • 試作/小ロット × コスト重視 → トムソン型
  • 高精度 × 金属/硬質樹脂 → プレス金型

※上記はあくまで目安です。実際の刃型選定では、材料の種類・厚み・形状の複雑さ・必要な寸法精度・生産数量・リピート頻度・将来の量産計画など、複数の条件を総合的に判断する必要があります。

刃型の選び方|4つの判断基準

「どの刃型を選べばいいか」を判断するために、確認すべきポイントは大きく4つあります。

① 材料は何か

被加工材の種類・硬度・厚みは、刃型選定の出発点です。紙や薄いフィルムであればトムソン型やフレキシブルダイで対応できますが、高硬度・厚物材料には彫刻刃型やプレス金型が求められます。

② 生産数量(ロット)はどの程度か

  • 試作・小ロット → トムソン型・ゼンマイ刃
  • 中ロット → フレキシブルダイ・彫刻刃型
  • 大量生産 → ダイカットロール・プレス金型

「現在のロット」だけでなく、「将来の量産計画」も含めて判断することが重要です。現在は試作段階でも、将来的に量産へ移行する計画がある場合は、最初から量産を想定した型選定をすることで二重投資を防げます。たとえば、彫刻刃型で試作・小ロットを走らせつつ、量産フェーズではダイカットロールに切り替えるといった段階的な計画が可能です。

③ 求められる精度はどのレベルか

寸法公差の厳しさによって、使える刃型は限定されます。高精度が必要であれば、ダイカットロール・彫刻刃型・プレス金型が候補になります。また、刃のつなぎ目の有無も、微細形状や連続パターンの加工では重要な判断軸になります。

④ 生産スピードの要件はどうか

ラインスピードや納期要件によって、回転式(ダイカットロール)か平圧式かが分かれます。高速連続加工が必要な場合は、回転式が基本となります。

まとめ|「作れるか」ではなく「どう作るのが最適か」

打ち抜き加工に使われる刃型は種類が多く、それぞれに得意な領域があります。最適な刃型を選ぶためには、材料・ロット・精度・生産スピードという4つの視点から総合的に判断する必要があります。また、刃型本体の選定と同じくらい、表面処理による寿命・機能設計も重要です。

大切なのは、「この型で作れるか」ではなく、「どの型で作るのが最適か」という問いを立てることです。

ツジカワ株式会社は、創業以来100年以上にわたり彫刻技術を核としたものづくりに向き合い、刃型の設計・製作に必要な技術と経験を積み重ねてきました。刃型選定でお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。材料・加工条件・生産計画をお伺いしたうえで、最適な型の種類とアプローチをご提案します。

▼刃型選定のご相談はこちらから

お問い合わせ