複雑形状も、微細意匠も――ツジカワの5軸レーザー彫刻加工とは
レーザー彫刻とは、レーザー光を照射して金型や製品表面に高精度な意匠やテクスチャを直接刻む加工技術です。
レーザー加工と聞くと「レーザーカット」や「レーザーマーキング」を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、ツジカワの「5軸レーザー彫刻機」は、意匠性の高い金型加飾加工を実現できる設備です。さらに、3Dモデリング技術を活かし、複雑な形状へのテクスチャや質感の付与も可能です。
ツジカワは、1921年の創業以来、100年以上にわたり彫刻技術をコアとしたモノづくりを続けてきました。「エッチング」や「汎用彫刻」「切削彫刻」と技術の幅を広げていく中で、近年新しく導入されたのが「5軸レーザー彫刻」です。ツジカワが取り扱っている他の彫刻技術とは何が違うのか?どんなことができる技術なのか?詳しくご紹介していきます!

ツジカワの5軸レーザー彫刻技術の特長
①環境負荷改善
従来のエッチング加工では、表面処理の過程で酸やアルカリなどの薬液処理が必要となり、排水処理や廃液管理といった環境対応コストが避けられませんでした。
一方、ツジカワの5軸レーザー彫刻では、薬液や油剤を一切使用せず、レーザー光によって直接金属表面を除去・彫刻します。そのため、有害廃棄物の発生を大幅に抑制でき、作業環境の安全性向上にも寄与します。

それ以外のところには全て微細なテクスチャが彫り込まれている。
②硬度や深度に左右されずに微細加工が可能
加工の際に工具を使用しないため、鋼材の硬度や彫刻深さによる工具の欠損リスクを気にすることなく、微細なテクスチャや小さな刻印の加工が可能です。ロゴマーキングやブラスト等の対応も可能です。

ツジカワの5軸レーザー加工では小型で小径の製品でも微細な加工を入れ込む事ができます。
③意匠性・機能性について
レーザーによる微細加工の特性を活かすことで、金型上に複雑なデザインやテクスチャを高精度に再現することが可能です。
グラデーションのような繊細な階調表現や、異なる高さの凹凸、なだらかなレリーフ形状、複雑なヘアライン・シボなど、多彩な意匠表現に対応できます。
また、意匠性にとどまらず、高触感テクスチャや滑り止め形状など、機能性に寄与する表現への応用にも取り組んでいます。
現時点では定量的な機能評価までは行っておりませんが、将来的には「デザインに機能をもたせる加工」としてもご期待いただける領域です。

④加工工程のデジタル化
デジタルデータを使用することで、リードタイムの短縮や多数個取り金型、更新型などへの同一品質の保証が可能です。
調整の難しい柄同士の境目も、違和感なくシームレスに作成が可能です。

⑤5軸彫刻で複雑な形状にも対応可能
業界でも導入実績の少ない5軸レーザー彫刻機を3台保有しています。
加工ヘッドとテーブルが稼働することで、5軸による彫刻加工が可能です。
曲面のある複雑な形状の金型にも対応しております。

加工の際、稼働する箇所が縦・横・高さのものを「3軸加工」、
縦・横・高さに傾き・回転が追加されたものを「5軸加工」と呼びます。
動き方は機械によって異なりますが、ヘッドとテーブルが稼働することで、5軸による彫刻加工を可能にします。
切削加工とレーザー彫刻を組み合わせて複雑な形状への微細加工を実現。
対応素材と向いている加工対象
「各種特殊鋼(炭素鋼、工具鋼、ステンレス鋼 等)」への加工が可能です。超硬材や焼き入れ後の材料でも加工することができます。
しかし、金属彫刻加工に適した機械のため「樹脂」「ゴム」への加工はできません。切断や溶接、マーキング、穴あけなどの加工を行うその他のレーザー加工機とは加工可能な材質が異なります。
切削彫刻で多く使用される「アルミニウム」「真鍮」へも加工は可能ですが、各種特殊鋼と比較しそれぞれ仕上がり品質が異なるため事前のテスト等が必要となります。

他加工技術との違い
「5軸レーザー彫刻加工」がどんな時に役立つのか、ツジカワでも取り扱っている「エッチング加工」「切削彫刻加工」「放電加工」の特長と合わせてご紹介いたします!
加工技術 | 特長・メリット | 5軸レーザー彫刻の優位点 |
---|---|---|
エッチング加工 | 薬液を用いて不要な部分を溶かす加工で、コストを抑えつつ広範囲なパターン加工が可能。 | 環境負荷の軽減。デジタルデータに基づいた高精度な微細加工が可能で、職人の技術に依存しない安定した品質が実現できる。 |
切削彫刻加工 | 自動制御で金属工具を動かし、材料を削る加工技術。鏡面仕上げなど滑らかな表面加工も可能。 | 微細な工具を使用しなくても高精度な加工が可能。曲面や複雑な立体形状への彫刻も得意とし、加工難易度が高い意匠にも対応可。 |
放電加工 | 放電による熱で金属を溶かす工法。電気を通す素材であれば幅広く加工できる。 | 電極の製作工程が不要なため、リードタイムを短縮可能。高硬度材料にも安定して加工でき、設計変更にも柔軟に対応可。 |
「エッチング加工」「切削彫刻加工」「放電加工」「レーザー彫刻加工」
それぞれに良い部分があるので、ツジカワでも用途によって必要な技術を使い分けています。
ツジカワの強みと支援体制
ツジカワが「レーザー彫刻加工」を導入したのには理由があります。それは、ツジカワがこれまで培ってきた技術や体制が、この加工法ととても相性が良いからです。
① デザインの“イメージ”をカタチにする力
ツジカワは、ホットスタンプ用金型(プラスチック用)などの製作を通じて、リバースエンジニアリング技術や3Dモデリング技術を磨いてきました。
こうしたノウハウを活かして、ゼロからの設計はもちろん、「カタチはあるけどデータがない」といった場合にも3Dデータを作成し、レーザー彫刻加工に落とし込むことが可能です。
また、通常ならデザインと加工の間にいくつかの業者が介在するところを、ツジカワでは1社完結の体制でご対応。
デザイン検討からモデリング、金型用の加工データ作成まで、一貫してサポートします。

微細レーザー加工技術を用いて、クリームジャー容器のフタ天面金型に天然石のような自然なテクスチャーを施しました。
さらに、エンボス版や箔押し金型のデータづくりで培った経験から、革目や布地、シボ模様のような質感表現にも強みを持っています。※なお、成形金型の製作は協力会社と連携して対応しております。

②RAY Texture(オリジナルテクスチャサンプル)
独自に開発したテクスチャサンプルを多数ご用意しておりますので、その中からご希望の柄をお選びいただくことも可能です。既存柄からお選びいただくことで、加工までのリードタイムが削減できます。
また、社内にデザイン部門を備えているため、ご要望に合わせた新規開発も可能です。
イメージとなる実際のサンプルやラフスケッチをもとにヒアリングし、デザインの具現化もお手伝い致します。データ上での事前確認も可能です。

③切削彫刻との組み合わせ
長年培った彫刻技術のノウハウを活かし、切削彫刻加工とレーザー彫刻加工を組み合わせた加工が可能です。5軸での切削彫刻加工での実績も多数あります。

細かなテクスチャは「レーザー彫刻加工」
それぞれの特長を活かした加工が可能です。
ツジカワのレーザー彫刻で製品表現を一段上へ
ツジカワのレーザー彫刻技術は、環境負荷の軽減、微細な意匠表現、複雑形状への対応、そして加工工程のデジタル化による品質の安定と再現性の高さなど、多方面にわたるメリットを活かし、これまでにない加工表現の実現を目指しています。
「これまでにない質感を表現したい」「従来の手法では難しい加工に挑戦したい」といったご相談も含め、ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。

実際の月面画像をもとに凹凸のモデリングデータを作成し、レーザー彫刻でクレーターや地形の細部まで精巧に再現。