天然石の質感を成形品で再現したい ― 計測データからの作り起こしと、切削+レーザー彫刻で解決
| 課題 | 天然石など、実物の質感をそのまま成形品の表面に再現したい。既製のシボ見本帳では狙った表情が見つからない |
|---|---|
| 原因 | 化学腐食(エッチング)によるシボは既存パターンからの選択が基本であり、不規則な天然物の凹凸を任意に再現することが難しいため |
| 解決策 | 参考品の計測値をもとにテクスチャーデータを作り起こし、切削加工と5軸レーザー彫刻を組み合わせて金型へ加工 |
| 効果 | 見本帳にない一点物の質感を再現。データとして保持できるため、再現・他部品への展開などが可能 |
ご相談内容
化粧品ブランド様より、クレンジングバーム容器の蓋について「参考品としてお渡しする石の質感を、そのまま成形品で再現したい」というご相談をいただきました。
手に取ったときの重厚感、光の当たり方による表情の変化を、樹脂成形品で表現したいというご要望です。
お預かりした石は、砂目のような細かい表面と、部分的に大きく欠けた凹凸が同居する表情でした。
なぜ既存のシボでは再現できないのか
金型の表面加工として一般的な化学腐食(エッチング)は、あらかじめ用意されたパターンから選ぶ方式が基本です。革シボ、梨地、木目といった定番の表情は豊富に揃っていますが、「この石と同じ質感で」という指定に応えることはできません。
天然石の表情は不規則です。凹凸の深さも周期も一様ではなく、部位によって粗さが変わります。この「規則性のなさ」こそが天然物らしさの正体ですが、腐食による加工では深さ方向の制御が限られるため、再現が困難でした。
解決策
1. 計測値をもとに、テクスチャーを一から作り起こす
お預かりした石の表面形状を計測します。ただし、スキャンしたデータをそのまま金型に貼り付けることはしません。
形状を機械的にスキャンして数値のみを追うと、味気ないテクスチャーになってしまうことが間々あるためです。今回のように見た目そのものが価値を持つ加飾テクスチャーでは、計測した数値をもとに、デザイナーが「石そのものらしさ」を表現するテクスチャーを一から作成し、形状に工夫を加えていきます。
どの凹凸を活かし、どこを際立たせるか。この判断が仕上がりを左右します。
2. 大きな凹凸は切削、微細な質感はレーザー
参考品の石には、レーザー加工だけで再現するには大きすぎる凹凸がありました。
そこで、欠けた形状や大きなうねりは部分的に切削加工で土台をつくり、その上から石表面の微細な凹凸をレーザーで加工しています。
すべてをレーザーで彫り込もうとすると加工時間が膨らみます。切削と組み合わせることで、費用を抑えながら参考品の質感を再現できました。切削加工とレーザー彫刻を組み合わせてテクスチャーを再現できることは、ツジカワの強みのひとつです。
3. PL周囲の深さを徐変させ、離型性とデザインを両立
お客様からは、2つのご要望をいただいていました。
- 成形品で割り線(PL)を目立たせたくない
- 側面にもシボを入れたいが、離型できるようにしたい
対応として、岩目の形状に合わせて深さを徐々に変化させ、PL周囲ではほとんど深さが入らないように加工方法を工夫しました。
一律に浅くすれば岩目の表情そのものが失われます。石の凹凸の流れに沿って深さを変えることで、岩目の印象に違和感を与えずにPLへ向かって浅くしています。
この深さの徐変処理によって、デザインを成り立たせつつ、PLを目立たせないというご要望と離型性の問題を同時に解決することができました。

導入後の変化
- 見本帳にない、その製品だけの質感を実現
- 切削とレーザーの組み合わせにより、大きな凹凸を含む表情を費用を抑えて再現
- テクスチャーがデータとして残るため、データの部分的な修正や、別サイズ・別部品への展開が可能
- PL周囲の深さ処理により、側面までシボを入れた形状で離型性を確保
最後に
「この質感を再現したい」という参考品があれば、それが起点になります。石、木、布、革、あるいは試作品そのもの。計測値をもとに起こしたデータであれば、意匠の意図を損なわずに製品化まで進められます。
ツジカワはテクスチャーデータの作成から、切削加工・レーザー彫刻による金型への加工まで一貫して対応しています。転写率や離型性を考慮した深さや加工方法について、これまでの加工例をもとにご提案しながら、お客様と一緒に仕様を固めていきます。
シボ・彫刻加工のお困りごとがあれば、ツジカワにご相談ください。