ツジカワは、昨年に引き続き日本パッケージデザイン学生賞2024の協賛企業となりました。

日本パッケージデザイン学生賞2023年のレポートと
日本パッケージデザイン学生賞2024年のパンフレット
日本パッケージデザイン学生賞とは

JPDA(公益社団法人日本パッケージデザイン協会)が主催し、学生を対象に広くパッケージデザインを募集して選考するコンペティションです。協賛企業の一部は最終選考に残った作品の中から、独自の視点で作品を選ぶ「企業賞」を贈与することができます。

ツジカワは協賛企業の副賞(リワード)として「2023年の大賞作品とツジカワ賞作品の具現化」を掲げていました。

長い時を経てようやく具現化が完成したのでその制作過程を書いていきます!!

日本パッケージデザイン学生賞2023 大賞作品:「ボーッと入浴剤」

まずは大賞作品である、穴吹デザイン専門学校 綾野裕次郎さんの作品「ボーッと入浴剤」を具現化していきます。

日本パッケージデザイン学生賞 大賞作品 「ボーッと入浴剤」
日本パッケージデザイン学生賞2023 大賞作品
「ボーッと入浴剤」
作品コンセプト

開封後は船になり、楽しめる入浴剤のパッケージです。お風呂に入浴剤を入れると袋のゴミが出ます。開けた後の袋が水に流されて排水溝に張り付いたり、せっかくリラックスしているのにお風呂の端っこにある袋が気になったりそんな経験があるかと思います。 ゴミになるはずだった入浴剤の袋を楽しいものに変えることができないかと思い今回のパッケージを考えました。

船の汽笛の「ボーッ」という音が聞こえてきそうな可愛いパッケージ。
こんな商品があったら子どもも大人も楽しい入浴時間になること間違いなしです。

綾野さんに作成経緯を聞いてみる

綾野さんに作成の経緯を聞いてみたところ、

  • 作品づくりは授業の一環として取り組んだ
  • 学校内でパッケージコンペティションが開かれるので、それを意識して作り込んだ。

とのこと。授業の一環として学生賞の作品作りを行っていたそうです。

賞状を受け取る人
贈賞式で賞状を受け取る綾野さん

穴吹デザイン専門学校は日本パッケージデザイン学生賞2023にて、大賞1名(綾野さん)、銀賞1名、審査員特別賞2名、入選6名と非常に好成績でした!

作品のデータを見せてもらったところ、使用方法や使用上の注意などの記載を発見!

ボーッと入浴剤展開図データ
パッケージの展開図
実際にスタンドパウチを解体して設計したそうです。
ボーッと入浴剤注意書き
使用上の注意やバーコードまであります!!

学生賞はモックの提出はなく、画像とコンセプトのみの審査だったので、底面の印刷まで実製品を模しているとは気が付きませんでした!
理由について綾野さんは、「完成度を上げることで目にとまるようにしました。」と語っておられます。
見えないところまで気を配る姿勢、見習いたいです・・・!

学生賞に応募した作品は、写真用紙にイラストを印刷し、裏面にアルミシートを貼り付けて作成されています。
意外に簡単な作りですが、限られた予算と設備のなかで光沢と画質を両立する材質を見つけるのがなかなか難しかったそうです。

日本パッケージデザイン学生賞 大賞作品 ボーッと入浴剤 4種
実際に綾野さんが作成されたモックアップ
内部には本物のパウチのようにアルミシートが貼り合わせてあります。
「見えないところも含めて本物に近づける」という
綾野さんのこだわりが作品の厚みを作っているのだと感じます。

スタンドパウチはどうやって印刷されているのか?

綾野さんから作品の詳細を聞き、データをいただいた我々は、
さあ作ろう!
と一歩踏み出そうとして、はたと立ち止まりました。

スタンドパウチってどうやって印刷されてるの・・?

AIが生成したスタンドパウチ
AIに生成してもらったスタンドパウチのナゾ菓子

コンビニとかスーパーでスタンドパウチのお菓子や食品などを見ることがありますよね。
アレって一体どうやって印刷されているんでしょうか?
クエスチョンマークを頭に浮かべながらとりあえずチームで出た案を順に試してみることにしました。

耐水ペーパーに印刷

水の中で遊べる商品なので、まずは耐水の紙でテストしてみることにしました。

色々な種類の耐水紙
色々な耐水紙を購入!
耐水紙で ボーッと入浴剤を作るところ 作業台に印刷された耐水紙とカッターが並んでいる
切ったり貼ったり、切ったり貼ったり・・・
糊付け中のボーっと入浴剤
作業をしてくれたのはツジカワ東京デザインセンターのデザイナースズキ。
本当に助かりました。
水に浮かべたボーッと入浴剤
耐水テストも敢行!
耐水紙でつくったボーッと入浴剤
耐水テストはクリアしたものの・・・

とりあえず形にはなりましたが、やはり紙なのでフィルムのようなツヤ感が出ません。
正直綾野さんのモックアップを超える出来にはならない、ということで耐水紙案はボツとなりました。

蒸着フィルムに印刷

パウチって裏面銀色だから蒸着フィルムに直接印刷したらどうかな?
ということで、会社にあるインクジェットプリンタで蒸着フィルムにイラストを印刷してみました。

蒸着フィルムに直接印刷したボーッと入浴剤
プリンターから出てきた時点で「これは違う・・・!」と気づきました。

こちらは薄すぎてシワがよるわ、フィルムからインクがパリパリ剥がれるわ、成形できないわという散々な結果になりました。

PETに印刷してアルミシートを貼り合わせる

そこでシュリンクフィルムの印刷などを手掛けておられる企業に聞いてみたところ、パウチ袋の基材構成は

PET(裏刷り)
+ 蒸着PET or アルミ 
+ ポリプロピレン

となっている事がわかりました。
そこら中で見る製品なのにいざ印刷方法を調べてみると知らないことだらけだ・・・!
ツジカワのインクジェットプリンターはPETのように薄い基材を印刷するのには適していないため、株式会社ヤマテ・サイン様に印刷をお願いすることにしました。

そして出来上がってきたものがこちらッッ!!

フィルムに印刷されたボーっと入浴剤
美しく印刷されています!!


紆余曲折の末についにたどり着いたなー!という喜びを噛み締めながら手作業で成形していきます(スズキが)。

印刷されたフィルムをカットする
大枠でカット
蒸着フィルムを貼り付けているところ
裏面にアルミシートを貼り付ける
ボーっと入浴剤に折り目を付ける作業
折り目をつけて
作業台でフィルムをカットしているところ
余分な部分をカット
作成したモックを水に浮かべているところ
耐水テストもクリア!
完成したボーっと入浴剤が並んでいる
完成!

ついに完成!と浮かれたいところですが、まだ終わりではありません。

3Dプリンターで入浴剤のモックアップを作ろう!!

綾野さんの作品を見たとき、
ツジカワの3Dプリンターで入浴剤のモックアップをつくったらさらに素敵になるのでは?」という意見がありました。

そこで、綾野さんに入浴剤をデザインしてもらいました。
綾野さんが描いてくれたデザイン案がこちら!

入浴剤のアイデアデザインが
入浴剤のアイデアデザインが
全部かわいい!

このデザイン画を元に、パッケージに合わせて4種の入浴剤のモックアップを作ることにしました。

入浴剤モックの3Dモデリング画像
スケッチを元に作成した3Dモデリングデータ
3Dプリンターで作成された入浴剤モック
フルカラー出力が可能な精密3Dプリンターで作成。塗装はしていません。

この入浴剤らしい「ツブツブ感」を出すのにも色々と試行錯誤がありました。

ついに完成!!

そんなこんなでついに4種の「ボーッと入浴剤」が完成しましたッ!!

4種のボーッと入浴剤(パッケージと3Dプリンターによるモック)
左上:日本海の湯 右上:地中海の湯
左下:瀬戸内海の湯 右下:南極海の湯

元々のモックアップ写真と比べるとさらに「ホンモノ感」が増したのではないでしょうか?

綾野さんのモックアップとツジカワのモックアップ
左:学生賞提出時のモックアップ 右:今回のモックアップ

出来上がったものを綾野さんに送付したところ、綾野さんからこのようなコメントと写真が返ってきました。

綾野さんからのコメント

今朝モックアップが届きました。
この度はとても素敵なモックアップを 作ってくださりありがとうございました!
パッケージの触り心地、光沢感など実際の商品に近い形で感動しています!
中の入浴剤もサイズ感が可愛くて嬉しいです。
早速写真を撮らせてもらいました!
改めて、この度は本当にありがとうございました。

気球がたくさん浮かぶ壁紙の前に並んだボーッと入浴剤
綾野さんが送ってくれた写真
背景がおしゃれ!!
気球がたくさん浮かぶ壁紙の前に並んだボーッと入浴剤
並べるとよりかわいい。
ちょっとしたプレゼントに送りたいです。

見えないけれど、伝わること

今回「架空のパッケージをイチから作る」といういわゆる「やってみた企画」だったのですが、想像以上に色々と学びがありました。
中でも一番印象深かったのは

見えないところへのこだわりってちゃんと伝わるもんなんだなぁ

ということです。

本作品が大賞を受賞した理由は「ゴミ」を「おもちゃ」に転換するというコンセプトや、遊び心のあるデザインなど色々あると思いますが、架空のパッケージをリアルに近づけるための数々のこだわりが、これらに説得力を持たせているのではないかと思います。

本学生賞のスポンサーや作品具現化の活動は、直接的には弊社の営業活動に結びつくものではありません。しかし我々の経験値を確実に上げてくれました。
見えないところ対するこだわりではないですが、こういった活動を通してパッケージに対する知識強化を続けていきたいと思います!