デザインを現実にする挑戦。JPDA学生賞2025「食べごろ動物園」具現化ストーリー
JPDA(公益社団法人日本パッケージデザイン協会)が主催し、
ツジカワもスポンサーを務める「日本パッケージデザイン学生賞」
ツジカワでは協賛企業の副賞(リワード)として、「大賞作品とツジカワ賞作品の具現化」を行っています。
2023年から協賛企業として参加し、今回で3度目の学生賞。
今年も受賞作品の具現化に取り組ませていただきました!

目次
- 日本パッケージデザイン学生賞2025 大賞:「食べごろ動物園」
- 具現化への意気込み
- 最初の壁:食品包装における「安全」のスタンダード
- 「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」
- シールの素材探し
- 3Dプリンター製バナナの制作
- 第二の壁:バナナの曲面にフィットさせる技術
- 対策①シール周囲にカットを入れる
- 対策②バナナの形状を変える
- 3DPバナナにシールを貼ってみる
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日本パッケージデザイン学生賞2025大賞
:「食べごろ動物園」
2025年のテーマは「FUN」
大賞に輝いたのは、専門学校 桑沢デザイン研究所 陳 楠楠さんの作品
「食べごろ動物園」
作品コンセプト
バナナは熟成が進むと、シュガースポットと呼ばれる茶色い斑点が現れます。私はこの変化に着目し、バナナのパッケージをデザインしました。熟成が進むにつれて、シュガースポットがまるで動物の模様のように見えてきます。色の変化を楽しみながら、食べごろのサインにもなるパッケージの提案です。
(日本パッケージデザイン学生賞2025レポート)
バナナに直接シールを貼るだけで「情報の提供」というパッケージ(容器包装)の役割を斬新なアイデアで実現した作品です。
プラスチック容器包装リサイクル推進協議会によると、容器包装の基本的な役割は以下3点。
① 内容物の保護
容器包装は、中身製品の保護や品質保持に役立ちます。
輸送や店頭での中身製品の保護や、食品や飲料の場合には賞味期限や品質保持期限の延長で、食品のロスを減らす効果もあります。
② 取り扱いの利便性
容器包装は、輸送効率をあげたり、取り扱いをし易くする機能があります。
③ 情報の提供
容器包装は、内容物の製品に必要な様々な情報を表示したり、店頭でのアイキャッチ性を高める効果もあります。
容器包装の機能と役割 | プラスチック容器包装リサイクル推進協議会
具現化への意気込み
バナナの皮に直接シールを貼ることで生まれるパッケージ。
このデザインを具現化するにあたり、「環境への配慮」も盛り込もうと、植物由来の資源を原料の一部に使用した「バイオマスインキ」の使用などを検討し、意気揚々とスタートしました。
これがまさか、大きな試練の始まりだとは知らずに…

おめでとうございます!
最初の壁:食品包装における「安全」のスタンダード
具現化に際し、陳さんとミーティングを行い、制作されたラベルのデザインデータを共有いただきました。
「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」
バナナの皮に直接貼れるシールについて調べていたところ、食品用シールには「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」に適合した接着のりを使用する必要があるということがわかりました。
「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」とは
平成30年6月13日に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律により、食品用器具・容器包装について、安全性を評価した物質のみを使用可能とする制度です。
食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について|厚生労働省
ラベル・シール業界では知っていて当然の制度だと思いますが、ツジカワ具現化チームは初めて触れる内容。勉強になると同時に「シール素材なら何でもいいわけではない」ということで、チーム内に若干の緊張が走りました。
シールの素材探し
印刷するシール素材を探すものの、クリアのシートに印刷可能な、食品用シールがなかなか見つからない…!(食品用として販売されているシールは不透明だった。)
今回のデザインは「バナナのシュガースポットが動物の模様に見える」のが一番大事なところ。
抜き加工で動物のシルエットを抜くことも想定しましたが、細かな部分も多いので、シールが剥がれたり、パーツが切れたりする原因にもなってしまう…クリアのシールで加工できる方法がないか、試行錯誤が始まりました。
3Dプリンター製バナナの制作
素材探しに難航する中、ふと、展示用として造形していた3Dプリンター製バナナが目に入りました。
このバナナは、陳さんが製作された3Dモデル。
ラベルのデザインデータとあわせ、共有いただいたこちらの3Dモデル。日持ちがしないの本物のバナナの代わりに、展示用として3Dプリンター造形を行っていました。
食品用のシールを探しながら、3Dプリンター製バナナに貼る用として、普通のクリアシールを作ってみよう!ひとまず、ひとまずね!
第二の壁:バナナの曲面にフィットさせる技術
最近は個人でもシールが制作できる環境が充実しています。
データを入稿するだけで、簡単に綺麗なシールを作ることができました!
意気揚々とクリアのシールを貼り付けてびっくり。
「シールが、シワになる…!!!!」
バナナは曲面形状のため、シールがバナナのカーブに上手く沿ってくれませんでした。無理やり貼ろうとしてもシワになってしまいます。
対策①シール周囲にカットを入れる
ギザギザの線を入れる、輪郭線を変えるなどの細工を入れれば貼りやすくなるものの、デザインや貼ったときの印象が大きく変わってしまいます。
対策②バナナの形状を変える
3Dモデリングもツジカワの強み、シールが変えられないならバナナを変えればいいじゃない…!
リアルな曲線を持つバナナの3Dモデルに対し、シールが貼りやすいよう平らな面を作り上げていきます。
陳さんから共有いただいたバナナの3Dモデルと差別化し、作り替えたバナナのことを、ツジカワでは「デザインバナナ(略してデザバ)」と呼ぶことにしました。
2色の樹脂を使用して造形していきます。
3DPバナナにシールを貼ってみる
デザインバナナには、クリアのシールが綺麗に貼れました!完璧!!
展示用のシールができたことで、ツジカワ全体に安堵の空気が流れた瞬間です。
第三の壁:本物のバナナにも貼りたい
展示用シールができたとはいえ、本来の目的は「クリアの食品用シール」を制作すること。自力ではクリア素材で尚且つ食品用のシールは見つからず、、
具現化チームだけでは手詰まりの中、普段からお世話になっている株式会社丸紀印刷の金光社長に相談しました。金光社長は「シール印刷の基礎知識と基本マニュアル」という本も出版されたシール・ラベル印刷のエキスパート。
ツジカワ「金光社長…助けてください…。バナナに直接貼って問題ないかつ、曲面にも綺麗にフィットするシールを探しています」
金光社長「すごい難しいですね(笑)どこまで期待に添えるか分からないけど、転写シールを検討してみたらどうですか?」
転写シールとは?
転写ステッカー(転写シール)とは、台紙から剥がして貼る一般的なシールとは異なり、デザイン(絵柄や文字)の部分だけを対象物に貼り付けるアイテムです。まるで直接プリントされたかのような、自然で美しい仕上がりが特徴です。
すぐさま「転写シール 食品」と調べると、「可食シール」なるものを見つけました。たしかに、ケーキやコーヒーなどにプリントされているものを見たことがありました。これだ!金光社長ありがとうございます!
「可食シール」とは
でんぷんや寒天などを原料としたシートに、食用インクで印刷を施したもの。お弁当やお菓子に、オリジナルのイラストや写真、キャラクターのイラストを貼り付けてデコレーションできます。
しかも「可食シール」はシール自体が透明!ぴったりです!!
本物のバナナで具現化
食品に直接貼ってよいシールは見つかりましたが、曲面にどこまでフィットするかどうかは未知数。
「可食シール」が制作できたので、本物のバナナに貼ってみました。
本物のバナナにシールを貼ることができたので、作品のコンセプトである「色の変化を楽しみながら、食べごろのサインにもなる」という部分を体感してみました!
3DPバナナで具現化
本物のバナナでの具現化は達成!
しかし、本物のバナナは一週間もたてば真っ黒になってしまう上、長期的に保存することはできません。3Dプリンター製のデザインバナナでも時間の経過が感じられるよう、シュガースポットが出た状態のものを制作していきます。
こちらも2色の樹脂を使用して造形していきます。5種類のデザインがあるので、造形するバナナも本数多め。
5種類あるデザイン、すべてのシールを制作し、いよいよ完成です!
完成!!5種デザインが揃い踏み
完成品のお渡し
想像以上の長期戦となってしまいましたが…遂に、陳さんに完成品をお渡しすることができました!!!
陳 楠楠さんよりいただいたコメント
この度は、JPDA学生賞の受賞作品である「食べごろ動物園」を、実物として形にしていただき、本当にありがとうございました。
具現化を通し、私が考えていた段階ではまったく想像できていなかった課題が浮かび上がり、実際の制作に向けて対話を重ねることで、デザインには見た目やコンセプトだけではなく、素材、使用環境、時間の経過まで考える必要があるのだと学びました。また、今回は私にとって初めて日本のメーカーの方々と本格的にデザインについてやり取りをする経験でしたが、私のアイデアをできる限り尊重し、元のイメージに近い形で実現しようとしてくださったことが、本当に嬉しく、大きな励みになりました。
今回の経験を通して、デザインは一人で完結するものではなく、異なる専門性を持つ人々との協働によって、初めて現実の形になるのだと強く実感しました。同時に、アイデアと実物化の間には多くの課題があり、その差を理解し、専門家と相談しながら解決していくことも、デザイナーにとって大切な力だと感じました。
自分の小さなアイデアをここまで真剣に受け止め、実際の形にしていただいたことに、心より感謝しております。
この経験を今後の制作にも活かしていきたいです。
こちらこそ新しい発見がいっぱいあって、めちゃくちゃ勉強になりました、、!ありがとうございます!!!!!
具現化をふりかえって
今年の大賞作品「食べごろ動物園」は、バナナに直接シールを貼ることで、
それ自体をパッケージとして成立させる斬新なアイデアでした。
私たちは普段、パッケージを「物を包むもの」と捉えがちですが、
今回の具現化を通して、その役割や可能性の広がりを改めて実感しました。
これまで3年間具現化を行ってきましたが、毎年新しい発見や苦悩に出会います。
「シールを印刷するだけだから簡単そう」と思った私たちの予想は、見事に裏切られました。しかし、その予想外の壁こそが具現化の面白さです。
これからも受賞作品に込められたアイデアを大切にしながら、ものづくりを通じて新たな挑戦を続けていきたいと思います!!!































