箔押し加工に欠かせない「箔版」にはいくつか種類がありますが、今回はその中でも「エッチング(腐食)版」と呼ばれる銅版マグネシウム版について、それぞれの特徴や違いをわかりやすくご紹介します。

ツジカワでは、腐食技術を用いた製版を1929年からスタートし、現在では国内トップクラスの箔押し版・エンボス版メーカーとして、数多くの企業とお取引を重ねています。長年の経験と実績をもとに、現場目線で役立つ情報をお届けします。

箔版の種類は?

作成の方法で箔版を分けると以下2種となります。

  • エッチング版
  • 彫刻版

まず1の「エッチング版」についてですが、薬品で金属を「エッチング(腐食)」して作成された版です。そして2の彫刻版もその名の通り金属を「機械彫刻」して作成された版です。この2つは版の作成方法も違えば、得意とする表現方法も違います。今回はエッチング版に絞ってお伝えします。

彫刻版についての記事はこちら→箔押し印刷用金属版 について ―箔版: 彫刻版編-

エッチング版の種類は?

日本国内の箔押し印刷に最も一般的に使用されている版が腐食版です。

ツジカワで取り扱っている腐食版には

  • 銅版
  • マグネシウム版

の2種類があります。
それぞれどんな違いがあるのでしょう。

1. 銅版について

版は上から押して印刷するので逆版(文字が読めない向き)で作成します。

7mm厚の銅箔版

厚みは 1.0mm, 1.5mm, 3.0mm, 7.0mm と4種類あり、

1.5mm, 3.0mm, 7.0mmに関しては深彫り(通常よりも深く腐食すること)が可能です。


銅版の特徴としては以下の通り

  1. 耐久性が高い
  2. 絵柄が鮮明に出る
  3. (マグネシウム版と比べると)コストは高め

1.耐久性が高い

もう一方の材質マグネシウムと比較すると、圧倒的に硬度があるため耐久性が良いです。大ロットであったり、箔押しする基材が硬く、箔版がへたりやすい条件のときは銅版による版の作成をお勧めします。

2. 絵柄が鮮明に出る

銅版は彫りがシャープなので、細かい線や文字のまわりに箔がはみ出す、いわゆるバリが発生しにくく、クリアな仕上がりになります。
箔押しの中に小さな文字や細い抜きがあるデザインなら、銅版のほうがきれいに出るのでおすすめです。

3. (マグネシウム版と比べると)コストは高め

銅版は原材料が高価なことに加え、腐食に時間がかかるため、溶液も多く使用します。結果マグネシウムに比べると価格は上がります。

  

2. マグネシウム版について

7mm厚のマグネシウム箔版

マグネシウム版の厚みは1.0mm, 1.6mm, 3.0mm, 7.0mmと4種類あり、
3.0mm, 7.0mmに関しては深彫りが可能です。

マグネシウム版の特徴は以下の通り

  1. 必要十分な耐久性
  2. 細密表現に強い
  3. コスト効率に優れる

1. 必要十分な耐久性

銅版と比べると柔らかい素材のため、耐久性は落ちるが、小ロットなら十分対応可能。

2. 細密表現に強い

腐食時間が短いため、細かい凸が残りやすく絵柄の再現度は銅版よりも良いとされています。細かい絵柄かつ小ロットの場合はマグネシウム版が向いています。

3.コスト効率に優れる

だいたい銅版の60%程の価格で、初期投資を抑えやすい利点があります。
価格は面積や加工内容によって変動します。
価格に関しては弊社営業にお問い合わせいただくか、HP内のお問い合わせフォームからお問い合わせください。

 

3.断面の比較

銅版とマグネ版の断面図を比較してみましょう。

並べてみると銅版のほうが土手が鋭角に立っており、細い隙間も底まで腐食されているのが分かると思います。

マグネ版の写真のように土手が寝ているとこの三角のところに箔が詰まって絵柄が再現できなくなってしまうことがあります。

これを箔詰まりと呼んでいます。


また、押す紙が分厚く柔らかかったり、革製品に箔押しする場合などでもこのスペースに基材が入り込んでしまい箔詰まりが起きます。こういった基材には銅版がお勧めです。

 

4.箔押しの比較

では、実際に箔押しした場合の違いはどうでしょうか?

この写真からは明確な差は読み取れません。

このように、線幅3㎜程度の柄だとあまり差がつかないのが正直なところです。


版の写真だとマグネシウム版のほうが字が太って見えますが、土手が反射しているだけで押してみるとほとんど差がないことが分かります。

実際の箔押しに関しては、

  • 線が細い(柄が細かい)
  • ベタの中に細い抜き(箔押ししない部分)が入っている

など、厳しい条件のほうが銅版とマグネ版の違いがクリアに現れます。

このような、銅版とマグネシウム版を箔押しした際に出る違いについては、

今後別記事で紹介したいと思います。

 

5.版の耐久性、絵柄の再現度について

以上腐食版2種の紹介をいたしました。

ここまで読んで、実際にデザインされる方や、加工される方の中には、
「大ロットとはどれぐらいの量を指すのか?」や、
「細かい絵柄とは何mm程度の線を指すのか?」などの疑問を持たれる方がおられるかと思います。


残念ながらこの質問に明確にお応えすることは難しいです。
なぜなら使用される機械箔の種類紙の性質加工者の技術力などの要素によって版の持ちも絵柄の再現性も大きく変わるからです。

絵柄でいうと、0.2mm程度の線であれば版では凸として残りますが、箔押しされたときにその線が再現できているかどうかは上記のような条件に依存します

「結構デザイン細かいけど箔押しで再現できるかな?」という場合は加工業者様にご確認いただくか、事前テストを行うことをお勧めいたします。